Japanische Klassiker mit Furigana
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えいじつしょうひん
永日小品
Lesen Sie 永日小品 (えいじつしょうひん) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 50.000 Zeichen · 100 Bildschirme
細君は茶の間へ下る。井深は机に向って調べものを始めた。十分ばかりすると、ふと首を上げて、額の中が見たくなった。筆を休めて、眼を転ずると、黄色い女が、額の中で薄笑いをしている。井深はじっとその口元を見つめた。全く画工の光線のつけ方である。薄い唇が両方の端で少し反り返って、その反り返った所にちょっと凹を見せている。結んだ口をこれから開けようとするようにも取れる。または開いた口をわざと、閉じたようにも取れる。ただしなぜだか分らない。井深は変な心持がしたが、また机に向った。
調べものとは云い条、半分は写しものである。大して注意を払う必要もないので、少し経ったら、また首を挙げて画の方を見た。やはり口元に何か曰くがある。けれども非常に落ちついている。切れ長の一重瞼の中から静かな眸が座敷の下に落ちた。井深はまた机の方に向き直った。
その晩井深は何遍となくこの画を見た。そうして、どことなく細君の評が当っているような気がし出した。けれども明る日になったら、そうでもないような顔をして役所へ出勤した。四時頃家へ帰って見ると、昨夕の額は仰向けに机の上に乗せてある。午少し過に、欄間の上から突然落ちたのだという。