Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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えいじつしょうひん

永日小品

夏目 漱石

Lesen Sie 永日小品 (えいじつしょうひん) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 50.000 Zeichen · 100 Bildschirme

Aozora Bunko

香は薄い日光に吸われて、二間の空気の裡に消えて行く。自分はその二間の中に立って、上を見た。薔薇は高く這い上って行く。鼠色の壁は薔薇の蔓の届かぬ限りを尽くして真直に聳えている。屋根が尽きた所にはまだ塔がある。日はそのまた上の靄の奥から落ちて来る。

足元は丘がピトロクリの谷へ落ち込んで、眼の届く遥の下が、平たく色で埋まっている。その向う側の山へ上る所は層々と樺の黄葉が段々に重なり合って、濃淡の坂が幾階となく出来ている。明かで寂びた調子が谷一面に反射して来る真中を、黒い筋が横に蜿って動いている。泥炭を含んだ渓水は、染粉を溶いたように古びた色になる。この山奥に来て始めて、こんな流を見た。

後から主人が来た。主人の髯は十月の日に照らされて七分がた白くなりかけた。形装も尋常ではない。腰にキルトというものを着けている。俥の膝掛のように粗い縞の織物である。それを行灯袴に、膝頭まで裁って、竪に襞を置いたから、膝脛は太い毛糸の靴足袋で隠すばかりである。歩くたびにキルトの襞が揺れて、膝と股の間がちらちら出る。肉の色に恥を置かぬ昔の袴である。

主人は毛皮で作った、小さい木魚ほどの蟇口を前にぶら下げている。