Japanische Klassiker mit Furigana
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がらすどのうち
硝子戸の中
Lesen Sie 硝子戸の中 (がらすどのうち) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 52.702 Zeichen · 105 Bildschirme
その後私は「御作が好い御客に引かされた」という噂を、従兄の家で聞いた。従兄の家では、この女の事を咲松と云わないで、常に御作御作と呼んでいたのである。私はその話を聞いた時、心の内でもう御作に会う機会も来ないだろうと考えた。
ところがそれからだいぶ経って、私が例の達人といっしょに、芝の山内の勧工場へ行ったら、そこでまたぱったり御作に出会った。こちらの書生姿に引き易えて、彼女はもう品の好い奥様に変っていた。旦那というのも彼女の傍についていた。……
私は床屋の亭主の口から出た東家という芸者屋の名前の奥に潜んでいるこれだけの古い事実を急に思い出したのである。
「あすこにいた御作という女を知ってるかね」と私は亭主に聞いた。
「知ってるどころか、ありゃ私の姪でさあ」
「そうかい」
私は驚ろいた。
「それで、今どこにいるのかね」
「御作は亡くなりましたよ、旦那」
私はまた驚ろいた。
「いつ」
「いつって、もう昔の事になりますよ。たしかあれが二十三の年でしたろう」
「へええ」
「しかも浦塩で亡くなったんです。旦那が領事館に関係のある人だったもんですから、あっちへいっしょに行きましてね。