Japanische Klassiker mit Furigana
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ずいひつ みやもとむさし
随筆 宮本武蔵
吉川 英治
Lesen Sie 随筆 宮本武蔵 (ずいひつ みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 141.786 Zeichen · 278 Bildschirme
この土地は決して私にとって初めてな感じがしなかったからである。前から小説の背景とする必要に迫られ、地名辞書、古絵図、五万分ノ一地図、名所図絵、地誌などに依って、空想で作りあげていた私の胸中山水と、この土地の実景や地理が、どこも意外に思う節がないほど、偶然にも一致していたからだった。
雨合羽、蓑笠、洋傘、番傘、わらじ、足駄穿きなどの泥だらけな群集に、女子供や老人たちまで交じって、物珍しげに、私たちの自動車は取り囲まれてしまう。讃甘村小学校の校長さんやら大原町長や、村長その他の村の人達であった。
雨の降る道傍に立って、私はこの質朴な人々から長々と歓迎の辞を述べられる。この郷土の人々は自分たちと生地を同じゅうする三百年前の宮本武蔵という者を、さながら今も自分たちの家族の長として在るように敬慕し、そして誇りとしているのだった。たまたま、こうして訪れた私を迎えてくれるその誠実な欣び方は、私をほっと安心させてくれると共に、私の作品上の構想だの創作のための架空な挿入などを、尠からず相済まなく思わせた。
自動車を停めたすぐ後ろの傍に、偶然にも、武蔵の父の無二斎夫婦の墓がまだ取残されてあるから御一見くださいと、村の人達が先にこう上って行く。