Japanische Klassiker mit Furigana
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ずいひつ しんへいけ
随筆 新平家
吉川 英治
Lesen Sie 随筆 新平家 (ずいひつ しんへいけ) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 213.575 Zeichen · 424 Bildschirme
作家の仕事を業だといった人は、横光利一氏があるし佐々木味津三氏もまいどいっていた。生きている友人もまま自嘲的にいうことである。だが、どこかに“業の魅力”があることにはちがいない。ぼくのばあいも、こんな大きな仕事は確かにくるしいが、けれど、くるしい以上に、おもしろくもある。眼がさめるから起きるまで、「新・平家物語」があたまの中でタイムを刻み脈搏をうってゆく。古書や雑書の中に埋もれているときも、ラジオのニュースに耳をかしているときも、応接間の客と雑談しているあいだも、何かの繊維が、あたまの中の交織機に織りこまれ、それが一週間ごとに、一幅の布地になって机から離れてゆくことは、大げさにいえば、つい寝食も忘れてしまう楽しさである。
運動不足からつねに健康を害しているが、その愉悦をつつがなく続けてゆきたい欲望にもえるので、近ごろは、食味にたいしても、理性のままに、禁欲ができるようになった。ほかのいろんなことにも、この仕事を完成するためにはと思うと、禁欲が平気でできるようになったが、ただ一つ、禁煙だけは、どうにもできない。反対に、忘我の時間が多いせいか、徹夜などすると、夜明けになって、以前よりひどい机の灰とあたりの吸殻を発見する。