Japanische Klassiker mit Furigana
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ずいひつ しんへいけ
随筆 新平家
吉川 英治
Lesen Sie 随筆 新平家 (ずいひつ しんへいけ) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 213.575 Zeichen · 424 Bildschirme
終戦後、金閣寺を焼いた一青年に、世間は、ぞっとしたが、その愚は、まだ小さいといってよい。もっと、多くの大人が、もっと大きな愚を、もっと大胆にやったことのある実例を、歴史はすでに語っていた。これからは、そういう愚を、われらの地上に見ることのないようにと、蓮華蔵界(平和の世界)を体顕し給うものという大仏に、掌をあわせて、拝むほかはない心地がした。
なんといっても、東大寺焼打ちの箇条は、清盛の大罪科の一つに数え上げられている。けれど、南都の僧団が、武力をかかえ、自ら兵火を求めたことも、決して、罪なきものとはいえない。公平な史観からいえば、平家の罪は、もう過去にも裁かれているが、僧団の非僧侶的な歴史は、裁かれもせずに来た。
人間愚を、人間がやるときは、僧侶もたれも変りはない。人間はまだまだ原始の尾骨痕跡を持つ生き物にすぎないようだという反省を、「新・平家物語」の上では書こう。――などと、そんな空想を抱いたりした。そして若草山のまろい線が望まれる宗務所の一室で、薄茶を一碗いただいた後、東大寺の花の雨に濡れながら山門を出た。(昭和二十七年四月九日 都ホテルにて誌す)