Japanische Klassiker mit Furigana
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ずいひつ しんへいけ
随筆 新平家
吉川 英治
Lesen Sie 随筆 新平家 (ずいひつ しんへいけ) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 213.575 Zeichen · 424 Bildschirme
それは赤ンぼを負ぶっている十二、三の童女である。嘉治さんを振向いてぼくはいった。「どうです、この娘の顔は」「おうほんとにいい顔ですな」「平安朝の落し胤ですよ、きっとそうです」ぼくの空想ではなくそういうものはこの土地に遺っていていい理由がある。
鳥羽上皇の熊野御幸は、生涯二十三度に及ばれたとある。白河、後白河、堀河、高倉帝以後も、歴代、行幸は度々であった。随行の公卿百官から従者まで、数百名にのぼる行旅がえんえんと京都からこの山岳地まで二十日がかりで来たわけだ。
途中の風雨や、山坂の嶮路など、どう越されたのか想像もできない。殊に、それだけの人員やら熊野三山の大衆がこの地方にあふれた時、どんな景観が、この狭い山間に現出したことだろうか。
夕方の冬風の中を、村道の凍てついた小石を踏みながら、ぼつりぼつりと歩いていると、幻想はとめどがない。おそらく八百年前後このあたりは、熊野本宮の社殿を中心に、仏舎堂塔も、平安朝建築の精粋を極め、仮御所や社家僧房から随身の旅館、雑色たちの泊る聚落までを加えて、さながら山中の小京都ともいえる社会がここに営まれていたのではあるまいか。