Japanische Klassiker mit Furigana
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ずいひつ しんへいけ
随筆 新平家
吉川 英治
Lesen Sie 随筆 新平家 (ずいひつ しんへいけ) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 213.575 Zeichen · 424 Bildschirme
と、坐りこんだものである。
酔うほどに、話は閨秀作家月旦になり、その容色品評に及び、貢太郎老は、はしなくも「いや、美人では、時雨女史がなんといってもチクとええ。こないだの会で、椅子を隣り合せたとき、かの女の襟あしを上から覗いたが、充分、まだチクといけるわい。わしは時雨女史にする」と、ただの酔い方ではなく、春昼の藤の匂いも手伝って、妙に酒がまわったらしく、さあ、それから、藤原村辺りでも、あろうことかあるまいことか、むくつけき、いか物を露出して、村嬢田婦を追いまわすなど、山村の純風良俗を紊し、それをまた、ぼくらで追っかけ追ン廻して、なだめるなど、手を焼かせられたことがある。そうした往時などが、ひとり思い出されてきた。
今どき、旅行先で、どこが変った、かしこが変ったと、変り方に驚いているほど時代おくれな嘆声はないだろう。田中貢太郎老に手をやいたころ、川治に旅館はまだ一軒しかなかった。なんとそれがである。いや、みっともない。やめておく。
五十里のダム工事も、この山中を、たちまち町と化した原動力であろう。機械力と自然が噛みあい咆哮しあう絶壁の下を車はうねうね喘いでゆく。