Japanische Klassiker mit Furigana
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ずいひつ しんへいけ
随筆 新平家
吉川 英治
Lesen Sie 随筆 新平家 (ずいひつ しんへいけ) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 213.575 Zeichen · 424 Bildschirme
それが伴わなくては、東山温泉でないようなものらしい。その遠い唄声を「何節?」と女中氏に訊くと「げんにょ節」と答えた。――源如見たさに朝水汲めば、姿かくしの霧が降る――というのだそうである。源如というのは、きっと、道成寺の釣鐘の中へ逃げこんだような、きれいな若僧だったのだろうと思う。
うけ持ちの年増の女中氏、まめやかに、よく行き届く。嘉治さんの知人長岡の駒形氏をよく知っていた。この先の旅程でいずれお世話になるお人、奇縁というわけで、頼まれた宿の色紙短冊など、杉本画伯はじめ、こころよくひきうける。
ぼくは、「星野君のために」と題して、
忘れ物して恵日寺の月見たり
の句を同君に呈す。その他、駄句いくつか書いて、酔いと疲れに、くたんくたんになって寝こむ。
第三日目。お天気、誌すまでもなし。
朝飯に、一景物があった。
菌と豆腐の味噌汁を、鍋ごと火鉢にかけて、食べさせてくれたことである。以前にはよくあった旅館の親切気だが、忘れていたほど、このごろではめずらしく思う。それに、菌も美味い。
鬼怒川でも、シメジのお代りをしたが、これから先の北越でも、おそらく、行くところ、菌には、のべつ出会いそうである。