Japanische Klassiker mit Furigana
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あおべかものがたり
青べか物語
山本 周五郎
Lesen Sie 青べか物語 (あおべかものがたり) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 160.961 Zeichen · 317 Bildschirme
と栄子は云った。排気音のことをさすらしい、私はあぶなく笑いそうになり、酒にむせたようなふりをしてごまかした。
岸がんは金使いが上手だった。来るとまずしょうばいを片づけ、堀東のおでん屋で酒を飲み、そこから栄子を呼ぶ。「松の家」は堀南だが、歩いて五分とはかからない。ごったくやの習慣として、よその店から女を呼ぶと一時間なにがしかの玉代を取られるが、女にとっては一種の誇りになる。つまり、玉代を払っても早く逢いたいほど深い仲だ、と思われるのだそうで、岸がんはそういう女の気持をよく知っていた、ということであった。
半年あまり経った或る夜、岸がんはじかに「松の家」へあらわれた。あのガスをひるすてきな音も聞えなかったし、着物姿で、素足に古びた雪駄をはいていた。訊いてみるとオートバイではなくバスで来たのだそうで、五日もはらくだしをしたあとのようにげっそりとしていた。そして二人っきりになり、一本の酒も飲み終らないうちに、「おれといっしょに死んでくれ」と云いだした。
「初めに岸がんの顔を見たとき、あたいははあんて思ったわ、そして死んでくれって云われてまたははあんって思ったのよ」