Japanische Klassiker mit Furigana
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あおべかものがたり
青べか物語
山本 周五郎
Lesen Sie 青べか物語 (あおべかものがたり) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 160.961 Zeichen · 317 Bildschirme
土堤の夏
ていた。すると「千本」の長が譲歩してどなった、「先生、銭でなくってもいいだよ、蜜柑でも餅でもいいだよ」
そしてしんとなった。電燈の光で明るい窓をみつめながら、じっと反応を待っている子供たちの、一人ひとりの顔が、先生には眼に見えるように思えた。
「いくべいくべ」と他の少年が云った、「先生はきっとまた根戸川亭で飲んでるだ」
「押すな」と長の声がした、「押すなってえにえーばちばらすぞ」
かれらはがやがや騒ぎながら、蒸気河岸のほうへ戻っていった。先生は難をのがれてほっとし、机に両肱で凭れ、手で額を支えながら眼をつむった。
「おーかんけ おーかんけ」川下のほうへ遠のいていく唄声が聞えて来た、「おいなりさんのおーかんけ おぞーにとおーあげ おあげのだんからおっこって……」
土堤の夏
私は大きな写生帳と鉛筆箱を抱え、経木の海岸帽子をかぶって、土堤の上を家のほうへと歩いていた。沖の百万坪へスケッチにいった帰りで、洗い晒しの単衣は汗のため肌へねばりつき、尻端折りをしなければやすらかには歩けなかった。あまり優雅な譬えではないが、女性の臀部と猫の鼻も土用の三日だけはあたたかい(失礼)、という通言があるそうで、その日はおそらくその「三日」