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Japanische Klassiker mit Furigana

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あおべかものがたり

青べか物語

山本 周五郎

Lesen Sie 青べか物語 (あおべかものがたり) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 160.961 Zeichen · 317 Bildschirme

Aozora Bunko

彼はじっと川の水面を睨んでいる。無関心に見ると考えごとでもしているようだが、全神経を集注して睨んでいるので、その証拠には、水面にごみがなくなったとみた刹那、さっと手桶で水を汲むのである。――そこまでの慎重さもたぐい稀なものだが、それで終ったわけではない。こんどは手桶の脇に跼んで、いま汲んだ水を睨む。時間などはてんで頭にないようで、ゆっくりと、おちつきはらって睨んでおり、まったくごみがなければよし、ほんの僅かなごみでもあれば、その水は惜しげもなく川へあけてしまい、また流れの面を辛抱づよく睨むのであった。

初めて私がその男を観察したときは、そうとは知らなかったし、自分は釣りをしていたので、時間の経過には気づかなかったが、二つの手桶に汲み終るまで、二時間ちかくはかかったであろう。その男が満足して、天秤棒で二つの手桶を担ぎ、ゆうゆうと歩き去ったときには、もう倉なあこもそこにはいなかったのである。

水を汲むのに二時間ちかくもかかったというと、たぶん信用しない人のほうが多いだろう、私も初めてのときはそれほどとは感じなかった。けれども二度めに見、三度めに見、そののちしばしば観察するに及んで、二時間くらいはざらであり、ときには半日ちかくもかかるのを実際に見た。