Japanische Klassiker mit Furigana
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あおべかものがたり
青べか物語
山本 周五郎
Lesen Sie 青べか物語 (あおべかものがたり) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 160.961 Zeichen · 317 Bildschirme
「黙って歩け」としゃがれ声の男が云った、「助十郎はこを濡らしちゃいねえか、はこは大丈夫か」
問いかけられた相手がなにか答えた。
「寒いよ」と女の子が泣き声で(かれらはこのときちょうど私の家の前にさしかかっていた)云った、「かあちゃん寒いよ、耳へ雨がはいるよ」
「井前橋から新川堀へいったらどうかな」と云う声がした、「とくぎょうは危ねえと思うが」
「黙って歩けねえのか」しゃがれ声の男がどなった、「みんな持ち物を落すな、早くしねえと、……」
そのあとは聞きとれなかった。
庇と雨戸を打つ雨の音がはっきりし、かれらの話し声は、川上のほうへと遠ざかっていった。どういう人たちだろう、男女と子供で七八人はいたようだ。宿でもとれなかったのだろうか、私は漠然とそんなふうに思ったが、それだけのことで、考えはまた元に戻り、少女小説を書くか童話にするか、それとも東京の洒落斎翁のとこへねだりにゆくかなどと、怠けた思案に耽るのであった。
明くる日、私は午ちかくに起き、高品さんを訪ねて童話原稿の前借をした。高品さんはもちろん新聞社へ出勤したあとで、きん夫人がそれだけのものを貸してくれた。