Japanische Klassiker mit Furigana
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せいあどうきだん
青蛙堂鬼談
岡本 綺堂
Lesen Sie 青蛙堂鬼談 (せいあどうきだん) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 121.438 Zeichen · 238 Bildschirme
妻と与市とは少しくおくれて出ると、途中で五月の日はすっかり暮れ切って、ゆく手の村は青葉の闇につつまれてしまったので、かれらは尾けてゆく人のすがたを見失った。
「どうしようか。」と、妻は立止まって思案した。
「ともかくも洲先まで行って御覧なされてはいかが。」と、与市は言った。
「そうしましょう。」
まったくそれよりほかに仕様がないので、妻は思い切ってまた歩き出したが、なにぶんにも暗いので、かれは当惑した。与市は男ではあり、土地の勝手もよく知っているので、さのみ困ることもなかったが、庄兵衛の妻は足許のあぶないのに頗る困った。夫のあとを尾けるつもりで出て来たのであるから、もとより松明や火縄の用意もない。妻はたまりかねて声をかけた。
「与市。手をひいてくれぬか。」
与市はすこし躊躇したらしかったが、主人の妻から重ねて声をかけられて、彼はもう辞退するわけにもゆかなくなった。かれは片手に主人の妻の手を取って、暗いなかを探るようにして歩き出した。そうして、まだ十間とは行かないうちに、路ばたの木のかげから何者か現われ出て、忍びの者などが持つ龕燈提灯を二人の眼先へだしぬけに突きつけた。