Japanische Klassiker mit Furigana
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せいあどうきだん
青蛙堂鬼談
岡本 綺堂
Lesen Sie 青蛙堂鬼談 (せいあどうきだん) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 121.438 Zeichen · 238 Bildschirme
番衆町へ来てから足かけ三年目が明治十九年、すなわち大コレラの年でございます。暑さも暑し、辺鄙なところに住んでおりますので、めったに市内のまん中へは出ませんから、世間のこともよく判らないのでございますが、毎日の新聞を見ますと、市内のコレラはますます熾になるばかりで、容易にやみそうもありません。
八月の末の夕方でございました。母とわたくしが広い縁側へ出て、市内のコレラの噂をして、もういい加減におしまいになりそうなものだなどと言っておりますと、縁に腰をかけていたお富がこんなことを言い出しました。
「でも、奥さん、ここらにはコレラになりたいと言っている人があるそうでございますよ。」
「まあ、馬鹿なことを……。」と、母は思わず笑い出しました。「誰がコレラになりたいなんて……。冗談にも程がある。」
「いいえ、それが本当らしいのでございますよ。この右の横町の飯田という家を御存じでしょう。」
と、お富はまじめで言いました。「あの家の御新造ですよ。」
この時代には江戸のなごりで、御新造という詞がまだ用いられていました。それは奥さんの次で、おかみさんの上です。つまり奥さん、御新造さん、おかみさんという順序になるので、飯田さんという家はなかなか立派に暮らしているのですが、その女あるじが、囲い者らしいというので、近所では奥さんとも