Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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くろだじょすい

黒田如水

吉川 英治

Lesen Sie 黒田如水 (くろだじょすい) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 163.639 Zeichen · 325 Bildschirme

Aozora Bunko

四

やがて、彼女はそっと身を起した。

四

建物の土台と池水との境に、わずかに幅一尺か二尺の自然に溜った泥土がある。そこも蘆や雑草が生い茂り、壁の直下に沿うて一すじの渚をなしていた。ひたと、建物に貼りついた姿勢のまま、彼女は横歩みに、その渚を横へ横へ、少しずつ進んだ。

池の中ほど近くまで行くと、折々、やや土溜りの広い所もある。そうした所に立つと、ほっと、息をついて、あたりを見まわした。

窓は、近かった。けれどこの外からでは仰ぐほど高い。そしてそこまで、藤棚の藤づるは這いこんでいた。

(藤の蔓ならば忍び入れるものを)――

と、彼女は小娘の夢のようなことを真剣に考えた。そしてなお、できるだけ窓の下へ近づいて両の手で口をかこみ、忍びやかに、しかし懸命をこめて、

「官兵衛さま。官兵衛さま」

と、呼びかけた。

藤棚のうえを、ざわざわ風が渡ってくる。もしその風がこの声を伝えもせば――と、彼女は飽かず、間を措いては、呼んでいた。

「……官兵衛さま。もしっ。もしっ」

五

黒田官兵衛は、むくと、首をもたげた。

そして、炎々たる眸で、牢獄のうちを睨めまわした。

天井は高い。間口奥行は広い。