Japanische Klassiker mit Furigana
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くろだじょすい
黒田如水
吉川 英治
Lesen Sie 黒田如水 (くろだじょすい) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 163.639 Zeichen · 325 Bildschirme
草履片方・下駄片方
一
父と思うておるか」
「ううん」又坊は首を振った。
「思っておらんか」
「ええ」と、うなずいて、体をもじもじさせた。官兵衛の膝にいるのは窮屈らしいのである。
「姫路へゆけば、おまえの友達になれる者がいるぞ」
と、いったりしたが、又坊は楽しまなかった。それからやっと彼の心を察して、こんどは母里太兵衛や栗山善助の仲間にあずけ、列の中に加えて勝手に歩かせておくと、急に元気になり出して、見ちがえるほどはしゃいだり馬の尻尾に悪戯をしたりし始めた。
「ははは。子供はやはり、陣輿には飼えんなあ」
官兵衛もかえって明るい気持になった。この一孤児が、黒田という一家風のうちに育まれて、成人の後、後藤又兵衛基次と世に称ばれるような男になろうとは、このときまだその寸芽の色すら誰の眼にも見えなかった。
草履片方・下駄片方
一
前もって彼の帰国を知っていた――彼の妻、彼の子ら、彼の家臣たちは、みな姫山の門に並んで、彼を待っていた。
官兵衛の列が上って来た。その顔の見えるころから、子らは笑みかけ、妻は涙に迎え、家中の者の顔は感激に燃えた。
「帰ったぞ。みな迎えてくれたか――」
馬を止めると、官兵衛は馬上からそのまま、一同の上へ、いつに変らぬ快活な声を投げて、さて、ぎごちなく、片足で轡を踏まえながら、ひらりと地に降りた。