Japanische Klassiker mit Furigana
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くろだじょすい
黒田如水
吉川 英治
Lesen Sie 黒田如水 (くろだじょすい) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 163.639 Zeichen · 325 Bildschirme
官兵衛は馬を寄せて、ふたりのすぐ前まで行った。於菊は俯向いたまま、なお顔を上げないのである。官兵衛は、彼女が面を上げるまで待っているように眺めていた。
「於菊」
「……はい」
「いつ飾磨の家へ帰るか」
「…………」
於菊は、なぜか真っ紅になった。瞼は見せないが、泣いているらしいのである。彼女の足のつまさきに涙がこぼれた。
官兵衛は、涙の意味を覚らなかった。単なる別れをかなしむものとしか思わなかった。で、むかしのような気がるさでその哀愁をなぐさめた。
「まだ、当分はむずかしかろうが、三木城でも陥ちて、一と戦陣終ったら、また与次右衛門の家へも遊びに立ち寄ろう。……それまでには、そなたも飾磨へ帰っているだろうし……」
すると彼女の涙はなお速く頬を走った。見るに見かねたように、義兄の新七が、あわてて彼女に代っていった。
「殿さま。於菊はもう飾磨へは帰りませぬ」
「ほう。――此地におるか」
「どこに住むことになるやら分りませんが、さるお方と縁談がととのって、やがて嫁ぐことになりました」
「なに、他家へ嫁ぐか。……そういえば、もう嫁ぐ年頃だのう」
急に官兵衛も淋しさを抱いたようだった。