Classiques japonais avec furigana
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みみずのたわこと
みみずのたはこと
徳冨 健次郎
Lisez みみずのたはこと (みみずのたわこと) de 徳冨 健次郎 (とくとみけんじろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 265 437 caractères · 530 écrans
儂は儂の住居が水草を逐うて移る天幕であらねばならぬことを知らぬでは無かった。また儂自身に漂泊の血をもって居ることを否むことは出来なかった。従来儂の住居が五六年を一期とする経歴を記憶せぬでは無かった。だから儂は落ちつきたかった。執着がして見たかった。自分の故郷を失ったからには、故郷を造って見たかった。而して六年間孜々として吾巣を構えた。其結果は如何である? 儂が越して程なく要あって来訪した東京の一紳士は、あまり見すぼらしい家の容子に掩い難い侮蔑を見せたが、今年来て見た時は、眼色に争われぬ尊敬を現わした。其れに引易え、或信心家は最初片っ方しか無い車井の釣瓶なぞに随喜したが、此頃ではつい近所に来て泊っても寄っても往かなくなった。即儂の田園生活は、或眼からは成功で、或眼からは堕落に終ったのである。
堕落か成功か、其様な屑々な評価は如何でも構わぬ。儂は告白する、儂は自然がヨリ好きだが、人間が嫌ではない。儂はヨリ多く田舎を好むが、都会を捨てることは出来ぬ。儂は一切が好きである。儂が住居は武蔵野の一隅にある。平生読んだり書いたりする廊下の窓からは甲斐東部の山脈が正面に見える。