Classiques japonais avec furigana
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みみずのたわこと
みみずのたはこと
徳冨 健次郎
Lisez みみずのたはこと (みみずのたわこと) de 徳冨 健次郎 (とくとみけんじろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 265 437 caractères · 530 écrans
御大葬の夜
寂しい涼しい初秋の夜。
御大葬の夜
明治天皇大葬の夜である。
七時五十分、母屋の六畳を掃いて、清い白布をかけた長方形の大きな低い卓子を東向きに直した。上には、秋草の花を活けた小花瓶を右左に置き、正面には橢円形の小さな鏡を立て、其前に火を入れた青磁の香炉、紫の香包を傍に置いた。いさゝかランプの心を捻ると、卓子の上の物皆明るく、心も自ずからあらたまる。家族一同手を膝に、息をのんで控えた。
柱時計の短針が八時を指すか指さぬに、
ドオ………ン!
待ち設けても今更人の心魂を駭かす大砲の音が、家をも我等の全身をも揺り撼かして響いた。
今霊轜宮城を出でさせられるのだ。
主人は東に向い一拝して香を焚き、再拝して退った。妻がつゞいて再拝して香を焚き、三拝して退いた。七歳の鶴子も焼香した。最後に婢も香を焚いて、東を拝した。
余が家の奉送は終った。
*
余は提灯ともして、妻と唯二人門を出た。
曇った暗い夜である。
八幡下の田圃まで往って東を見る。田圃向うの黒い村を鮮やかに劃って、東の空は月の出の様に明るい。何千何万の電燈、瓦斯、松明が、彼夜の中の昼を作して居るのであろう。