Classiques japonais avec furigana
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みみずのたわこと
みみずのたはこと
徳冨 健次郎
Lisez みみずのたはこと (みみずのたわこと) de 徳冨 健次郎 (とくとみけんじろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 265 437 caractères · 530 écrans
首夏
首夏
先日七の家から茄子苗を買ったら、今朝七の母者がわざ/\茄子の安否を見に来た。
此頃の馳走は豌豆めしだ。だが、豌豆にたかる黒虫、青虫の数は、実に際限がない。今日も夫婦で二時間ばかり虫征伐をやった。虫と食を争い、蠅と住居を争い、人の子もこゝさん/″\の体たらくだ。
午後筍買いに隣村まで出かける。筍も末だ。其筈である、新竹伸びて親竹より早一丈も高くなって居る。往復に田圃を通った。萌黄に萌え出した苗代が、最早悉皆緑になった。南風がソヨ/\吹く。苗代の水に映る青空に漣が立ち、二寸ばかりの緑秧が一本一本涼しく靡いて居る。
両三日来夜になると雷様が太鼓をたゝき、夕雲の間から稲妻がパッと射したりして居たが、五時過ぎ到頭大雷雨になり、一時間ばかりして霽れた。
袷では少し冷つくので、羅紗の道行を引かけて、出て見る。門外の路には水溜りが出来、熟れた麦は俯き、櫟や楢はまだ緑の雫を滴らして居る。西は明るいが、東京の空は紺色に曇って、まだごろ/\遠雷が鳴って居る。武太さんと伊太さんが、胡瓜の苗を入れた大きな塵取をかゝえて、跣足でやって来る。
最早夏に移るのだ。
(明治四十四年 五月二十七日)