Classiques japonais avec furigana
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みみずのたわこと
みみずのたはこと
徳冨 健次郎
Lisez みみずのたはこと (みみずのたわこと) de 徳冨 健次郎 (とくとみけんじろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 265 437 caractères · 530 écrans
此処は余にも縁浅からぬ座敷である。余の伯父はすぐれた大食家で、維新の初年こゝに泊って鰻の蒲焼を散々に食うた為、勘定に財布の底をはたき、淀川の三十石に乗る銭もないので、頬冠して川堤を大阪までてく/\歩いたものだ。伯父の血をひいた余とても御多分に洩れぬ。八年前の秋、此万碧楼に泊った余は、霜枯時の客で過分の扱いを受け、紫縮緬の夜具など出された。御馳走も伯父の甥たるに恥じざる程食うた。食うてしまったあとで、蟇口を覗いて見た余は非常に不安を感じた。そこで翌朝宿の者には遊んで来ると云い置いて、汽車で京都に帰った。少し都合もあって其日は行かれず、電報、手紙も臆劫だし、黙って打置き、あくる日になって宇治に往った。万碧楼では喰逃げが帰って来たと云う顔をして、茶代も少し奮発したに関せず、紫縮緬の夜具は雲がくれて、あまり新しくもない木綿の夜具に寝かされた。主の方では無論覚えて居る由もない。余は独笑坪に入った。
腰硝子の障子を立てたきり、此座敷に雨戸はなかった。二つともした燭台の百目蝋燭の火は瞬かぬが、白い障子越しに颯々と云う川瀬の響が寒い。障子をあけると、宇治の早瀬に九日位の月がきら/\砕けて居る。