Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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にちりん

日輪・春は馬車に乗って 他八篇

横光 利一

Lisez 日輪・春は馬車に乗って 他八篇 (にちりん) de 横光 利一 (よこみつりいち) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 86 787 caractères · 177 écrans

Aozora Bunko

彼を目がけてが飛んだ。行器が飛んだ。覆った酒瓮から酒が流れた。そうして、海螺や朱実が立ち籠めた酒気の中を杉戸に当って散乱すると、再び数本の剣は一斉に若者の胸を狙って進んで来た。身屋の外では法螺が鳴った。若者は剣を舞わせて使部たちの剣の中へ馳け込んだ。そうして、その背後で痼疾に震えている宿禰の上へ飛びかかると、彼を真菰の上へ押しつけた。使部たちの剣は再び彼に襲って来た。彼は宿禰の胸へその剣の尖をさし向けると彼らにいった。

「我を殺せ、我の剣も動くであろう。」

使部たちは若者を包んだまま動くことが出来なかった。宿禰は若者の膝の下で、なおその老躯を震わせながら彼らにいった。

「我を捨てよ。彼を刺せ。不弥のために奴国の王子を刺し殺せ。」

しかし、使部たちの剣は振り上ったままに下らなかった。法螺はただ一つますます高く月の下を鳴り続けた。銅鑼が鳴った。兵士たちの銅鉾を叩いて馳せ寄る響が、武器庫の方へ押し寄せ、更に贄殿へ向って雪崩れて来た。

「奴国の者が宮に這入った。」

「姫を奪いに。」

「鏡を掠りに。」

騒ぎは人々の口から耳へ、耳から口へと静まった身屋を包んで波紋のように拡った。