Classiques japonais avec furigana
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にちりん
日輪・春は馬車に乗って 他八篇
横光 利一
Lisez 日輪・春は馬車に乗って 他八篇 (にちりん) de 横光 利一 (よこみつりいち) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 86 787 caractères · 177 écrans
そのとき、部屋の外から重い跫音が響いて来た。そうして、彼女の部屋の遣戸が急に開くと、そこへ現れたのは反絵であった。彼は二人の姿を見ると突き立った。が、忽ち彼の下顎は狂暴な嫉妬のために戦慄した。彼は歯をむき出して無言のまま猛然と反耶の方へ迫って来た。
「去れ。去れ。」と反耶はいって卑弥呼の傍から立ち上った。
反絵は、恐怖の色を浮かべて逃げようとする反耶の身体を抱きかかえると、彼を円木の壁へ投げつけた。反耶の頭は逆様に床を叩いて転落した。反絵は腰の剣をひき抜いた。そうして、露わな剣を跳ねている兄の脇腹へ突き刺した。反耶は呻きながら刺された剣を握って立ち上ろうとした。が、反絵は再び彼の胸を斬り下げた。反耶は卑弥呼の方へ腹這うと、彼女の片足を攫んで絶息した。しかし卑弥呼は横たわったまま身動きもせず、彼女の足を握っている王の指先を眺めていた。反絵はまた陽に逢わぬ影のように青黒くなって反耶の傍に突き立っていた。やがて、反絵の手から剣が落ちた。静かな部屋の中で、床に刺って横に倒れる剣の音が一度した。
「卑弥呼、我は兄を殺した。爾は我の妻になれ。」
反絵は卑弥呼の傍へ蹲むと、荒い呼吸を彼女の顔に吐きかけて、彼女の腰と肩とに手をかけた。