Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

しゅくず

現代日本文学館8 徳田秋声

徳田 秋声

Lisez 現代日本文学館8 徳田秋声 (しゅくず) de 徳田 秋声 (とくだしゅうせい) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 327 364 caractères · 638 écrans

Aozora Bunko

十

。

話がはずんているところへ、今日も罐詰屋の野良息子が顔を出し、ちょっとふてぶてしくも見える青年が、壁ぎわの畳敷きに胡座を組んで葉巻をふかしているのを見て、戸口に躊躇した。彼はなんという目的もなく、ただ銀子が好きで、分寿々廼家へもひょこひょこ遊びに来、飯を食いに銀子を近所の釜飯屋へ連れ出し、にやにやしているくらいがせいぜいであった。

彼は日本橋の国府へ納める荷物の中に、幾割かのロオズ物があり、それを回収して、場末の二流三流の商店へ卸すために、時々東京へ出るので、このころにもそのついでに、罐詰を土産に、錦糸堀の銀子の家を訪ね、荷はいくらでも送るから、罐詰の店を出してはどうかと、親父に勧めたりしたものだった。

十

二週間ほどして、ある朝銀子は病床のうえに起きあがり、タオルを肩にかけて、痒みの出て来た頭の髪をほどき、梳櫛を入れて雲脂を取ってもらっているところへ、写真師の浦上が入って来た。八月も終りに近く、驟雨が時々襲って来て、朝晩はそよそよと、肌触りも冷やかに海風か吹き通り、銀子は何となし東京の空を思い出していた。

浦上は手足ののんびりした、華車造りの青年であったが、口元に締りがなく、笑うと上の歯齦が剥き出しになり、汚らしい感じで、何となく虫が好かず、親切すぎるのも煩かった。