Classiques japonais avec furigana
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しゅくず
現代日本文学館8 徳田秋声
徳田 秋声
Lisez 現代日本文学館8 徳田秋声 (しゅくず) de 徳田 秋声 (とくだしゅうせい) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 327 364 caractères · 638 écrans
七
た。指環の台は純金であったが、環状に並べた九つの小粒の真珠の真ん中に、一つの大きな真珠があり、倉持家の定紋に造られたもので、贈り主の父の母に対する愛情のいかに深かったかを示すものであり、それを偸み出して女に贈る坊っちゃんらしい彼の熱情に、銀子も少し驚きの目を見張っていた。
「そんなことしていいんですの。」
「僕は君を商売人だとは思っていないからそれを贈るんだ。受けてくれるだろう。」
「え、有難いと思うわ。」
七
桜の咲く五月ともなると、梅も桃も一時に咲き、嫩葉の萌え出る木々の梢や、草の蘇える黒土から、咽ぶような瘟気を発散し、寒さに怯えがちの銀子も、何となし脊丈が伸びるような歓びを感ずるのであった。暗澹たる水のうえを、幻のごとく飛んで行く鴎も寂しいものだったが、寝ざめに耳にする川蒸汽や汽車の汽笛の音も、旅の空では何となく物悲しく、倉持を駅まで送って行って、上りの汽車を見るのも好い気持ではなかった。東京育ちの、貧乏に痛めつけられて来たので、田舎娘のように自然に対する敏感な感傷癖も、格別なかったけれど、他国もの同士のなかに縛られている辛さが、隙洩る風のように時々心に当たって来て、いっそどこかへすっ飛んでしまおうかと思うこともあったが、来たからにはここで一と芝居うとうという肚もあり、乗りかかった運命を保って行くつもりで