Classiques japonais avec furigana
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しゅくず
現代日本文学館8 徳田秋声
徳田 秋声
Lisez 現代日本文学館8 徳田秋声 (しゅくず) de 徳田 秋声 (とくだしゅうせい) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 327 364 caractères · 638 écrans
庸三は不幸な長い自身の生涯を呪いさえするのであった。
するうち部屋が薄暗くなって来た。電燈のスウィッチを捻ろうとおもって、ふと目を挙げると球が紅い手巾に包まれてあった。瞬間庸三は心臓がどきりとした。やがて卓のうえに立ってそれを釈いた。いつのまにそんなことをしたのか、少しも知らなかった。庸三は卓をおりてさもしそうに手巾を鼻でかいでみた。昨夜葉子はこの恋愛を、何か感激的な大したロオマンスへの彼の飛躍のように言うのだったが、そう言われても仕方がなかった。庸三は次第に彼女の帰って来るのが待遠しくなって来た。帰って来るかどうかもはっきりしなかった。彼は帰って来ないことを祈ったが、やはり苦しかった。するとその時ボオイが次の間の入口に現われて、
「梢さんからお電話です。」
「そう。」
庸三は頷いて立ち上がった。
「先生ですの。何していらっしゃる。」
「君は。」
「私あれからお宅へ行って、子供さんたちと童謡なんか歌ってお相手していましたの。皆さんお元気よ。」
「今飯を食べようかと思っているんだけど、来ない?」
「先生のお仕事のお邪魔にならないようでしたら、すぐ行きますわ。」
三十分するかしないうちに、海松房模様の絵羽の羽織を着た葉子が、廊縁の籐椅子にかけて、煙草をふかしている彼のすぐ目の下の庭を通って、上がって来た。