Classiques japonais avec furigana
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しゅくず
現代日本文学館8 徳田秋声
徳田 秋声
Lisez 現代日本文学館8 徳田秋声 (しゅくず) de 徳田 秋声 (とくだしゅうせい) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 327 364 caractères · 638 écrans
「御免なさいね。――私昨夜こんなに書いたのよ。」
葉子はそう言って、原稿紙挟みから十枚余りの原稿を出して、ぺらぺらと繰っていたが、疲れきった体に、感傷的な哀憐の刺戟を感じたものらしく、まだ全く眠りからさめきらない庸三の体を揺り動かした。
するうちある夜またしても葉子の姿を見失ってしまった。庸三も朧ろげに感じている相手が誰であるかを、今なおはっきり突き留めたい好奇心に駆られた。彼女の患部にメスを揮った博士がまず彼の興味を刺戟したが、その他にも踊りの師匠の愛人、それから例の雑誌記者などにも疑惑は動いた。しかし何といっても、普通一般の思議を許さないあたりにも勤めている、優れた手腕と人格の持主である博士の生活に、ある新しい刺戟を感じているらしいことは、時々の彼女の口吻でも解るのであった。そうした地位の高い博士の愛を獲得することも、今まで気むずかしい芸術家ばかりを相手にしていた彼女にとっては、何か朗らかな悦びでなくてはならなかった。もしひょっとして博士が新しいペトロンの役割を演じてくれでもするとしたら、なおさらのことであった。
「また葉子がいなくなったよ。」