Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
しゅくず
現代日本文学館8 徳田秋声
徳田 秋声
Lisez 現代日本文学館8 徳田秋声 (しゅくず) de 徳田 秋声 (とくだしゅうせい) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 327 364 caractères · 638 écrans
かつて彼女は、庸三の家へ入りたてのころに、独りで帝国劇場へ女優劇か何かを見に行ったことがあった。その時多分彼女のどうかした表情が、その結果を生んだものであろうが、隣に座席を取っていた米国人らしい若い一人の紳士が、覚束ない日本語で彼女に話しかけた。双方の言葉が通じるというわけには行かなかったが、同伴者があるかどうかくらいのことは解った。葉子はかねがね白色外人に興味をもっていたけれど、不良外人の多いことをも知っていたので、そんな観衆のなかで煩く話しかけられるのがいやだった。彼女は座席を離れて廊下へ出た。そして売場の前を通ってバルコニイへ出て、濠端の夜景を見ていた。五月のころでもあったろうか、街路樹の葉はすでに蒼黒く繁っていて、軽い雨がふっていた。それは外人から逃げるためか、それとも誘い出すためだったか、彼女の話だけでは本当のことは解る由もなかったが、多少の好奇心に駆られていたものと思っても、間違いではなかった。ずっと後にある独逸の青年学徒と、しばらく係り合っていたという噂と照らし合わせてみても、すべてのモダアンな若い女性の例に洩れず、そうした外人にある憧憬をもっていたものと見てもよかった。