Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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しゅくず

現代日本文学館8 徳田秋声

徳田 秋声

Lisez 現代日本文学館8 徳田秋声 (しゅくず) de 徳田 秋声 (とくだしゅうせい) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 327 364 caractères · 638 écrans

Aozora Bunko

「そう言えば私も思い当たることがある。」

しかし庸三はまた異った意味で、下宿の主人を知っていた。四五年前に死んだ越後小千谷産まれの彼の父は、庸三の下宿時代から家庭生活時代へかけての幾年かに亙って、越後の織物を売りに来たものだった。そのころまだ顔の生白い若者が、今子供二人の父親であるこの家の主人であった。

「先生と奥さんのことよく話しているわ。」

葉子は言うのだったが、初めて庸三の家を飛び出して、行方を晦ましてしまった彼女を、偶然にも捜し当てたのも、またこの家であった。

新宿の旅館から荷物を持ちこんで来た葉子は、その当時壁紙など自分で張りかえた下の部屋に落ちついて、窓に子供っぽいカアテンを張り、二つの電球をもった、北海道時代から持ち越しの、例の仏蘭西製のスタンドも、こてこて刺繍のある絹張りのシェイドに、異国の売淫窟を思わせる雰囲気を浮かび出させるのであった。

庸三は時々瑠美子と並んで、陰鬱なその部屋に寝るのだったが、葉子も彼の書斎で夜を明かすこともあった。

するとある朝夙く――あいにくにもちょうど葉子が下宿の部屋を一晩明けた朝方に、電話がかかって来た。