Classiques japonais avec furigana
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きどうむかしがたり
綺堂むかし語り
岡本 綺堂
Lisez 綺堂むかし語り (きどうむかしがたり) de 岡本 綺堂 (おかもときどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 183 656 caractères · 363 écrans
私は黙って歩き出すと、女はやはり付いて来た。わたしは気味の悪い道連れ(?)をうしろに背負いながら、とうとう三宅坂下までたどり着いたが、女は河獺にもならなかった。坂上の道はふた筋に分かれて、隼町の大通りと半蔵門方面とに通じている。今夜の私は、灯の多い隼町の方角へ、女は半蔵門の方角へ、ここで初めて分かれわかれになった。
まずほっとして歩きながら、さらに考え直すと、女は何者か知れないが、暗い夜道のひとり歩きがさびしいので、おそらく私のあとに付いて来たのであろう。足の早いのが少し不思議だが、私にはぐれまいとして、若い女が一生懸命に急いで来たのであろう。さらに不思議なのは、彼女は雨の夜に足駄を穿かないで、素足に竹の皮の草履をはいていた事である。しかも着物の裾をも引き揚げないで、湿れるがままにびちゃびちゃと歩いていた。誰かと喧嘩して、台所からでも飛び出して来たのかも知れない。
もう一つの問題は、女の着物が暗い中ではっきりと見えたことであるが、これは私の眼のせいかも知れない。幻覚や錯覚と違って、本当の姿がそのままに見えたのであるから、私の頭が怪しいという理窟になる。