Classiques japonais avec furigana
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それでもわたしはいく
それでも私は行く
織田 作之助
Lisez それでも私は行く (それでもわたしはいく) de 織田 作之助 (おださくのすけ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 89 708 caractères · 181 écrans
しかし、小郷は、
「何……酔うてる……? 莫迦をいえ! 酔わなきゃ、五万、十万の金が出せない小郷だと思っとるのか。おれは小郷だぞ! 小郷虎吉だぞ!」
と、いかにも戦時利得者らしい声を出していた。
桔梗家のおかみは、昔は先斗町で鳴らした名妓だった。
「何どす……? 小郷虎吉が何どすえ……?」
と、昔なら食って掛ったところだった。
が、往年の名妓も、茶屋のおかみに収まってしまえば、ことに、きょうこの頃の新円生活では、いけすかない野暮な小郷を、大事な客だと思わねばならぬくらい意地も張りもなくしてしまっていた。
「ほな、一ぺん文の家はんへ行て来ます」
おかみは鈴子の抱主の文の家へ行って、
「――ほんまに、腹の立つ話どすけど……」
と、しかし一応は相談を持ち掛けると、文の家のおかみは、
「何しろこの頃のことどっさかいな、万とつく新円はなかなか、ちょっとやそっとで……」
出してくれる人はないから、丁度いい倖いだと、案外に話に乗って来た。
やがて……。
「鈴子はん、ちょっと……」
女中に呼ばれて、鈴子は、このいやなお座敷からやっと脱けられるのかと、ほっとしながら下へ降りて行くと、文の家のおかみが来ていた。