Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

それでもわたしはいく

それでも私は行く

織田 作之助

Lisez それでも私は行く (それでもわたしはいく) de 織田 作之助 (おださくのすけ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 89 708 caractères · 181 écrans

Aozora Bunko

「何という浅ましさだ!」

という想いが、すっと頭をかすめた。

が、しかし、それに抗しかねるほど、鶴雄の美貌や若さやうぶな固さは、宮子には魅力があった。

だから、殆んどわれを忘れていた――と言ってもよかった。

室町のお能に出る東京の能役者たちが泊っているのであろう、階下の間から、物憂い鼓の声がいかにも晩春の白昼の感じで聴えていたが、もう宮子の耳にはいらなかった。

鶴雄の耳にも、しかし、はいらなかった。

といって、鶴雄はわれを忘れていたわけではない。

ただ、驚いていたのだ。いや、腹を立てていたのだ。

宮子の熱っぽい息が、ふっと鶴雄の頬に掛った。

鶴雄は飛び上った。

「何をするんです」

「構わないでしょう……?」

宮子は再びすり寄って来た。

「本当に帰るぞ!」

鶴雄は柔い宮子の胸を押しのけながら、子供の喧嘩のような声を出した。

「撲ってよウ!」

宮子は火のような声を出した。

二十七歳の身体の中に燃えている火が、そのまま燃え上って来たような声であった。

「よし!」

声は低かったが、宮子の頬の音は高く鳴った。

「もっと撲って!」

そう言ったかと思うと、宮子はいきなり鶴雄の胸にガブリと噛りついた。