Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

それでもわたしはいく

それでも私は行く

織田 作之助

Lisez それでも私は行く (それでもわたしはいく) de 織田 作之助 (おださくのすけ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 89 708 caractères · 181 écrans

Aozora Bunko

「なるほど、出たのか」

「ええ」

「宮子は何と言ったの……?」

「卑怯者! と言いました」

「なるほど、卑怯者か。あはは……」

その「卑怯者」という宮子の言葉を背中に聴きながら、浴室を出ると、鶴雄は脱衣場で素早く洋服を着た。

脱衣場の窓の外はもうたそがれて、庭の椿の花が夕闇の中にぽっかりほの白く泛んでいた。

それをちらと見た途端、鶴雄はふと鈴子のことが頭に泛んだというのである。

夕闇の中の椿の花の清楚な白さが、鈴子を想い出させたのであろうか。

淫蕩的な宮子の爛熟した肉体を見た反動として、鈴子のういういしい可憐さが、ふとなつかしくなったのであろうか。

鶴雄は急に先斗町へ帰りたくなった。鈴子のいる先斗町へ……。先斗町の雰囲気は鶴雄にとっては堪え切れぬものだったが、しかしわずかに鈴子がいることで、鶴雄のあえかな郷愁をそそった。

黄昏のせいかも知れない。

脱衣場を出ると、鶴雄は宮子を浴室へ置き去りにして、廊下伝いに応接室へ帽子を取りに行った。

ところが、ドアをひらくと、応接室の中には意外な人物が坐っていた。

七

「あ、君は……」

応接室にいた女の顔を見て、鶴雄は思わず声が出た。