Classiques japonais avec furigana
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みみずのたわこと
みみずのたはこと
徳冨 健次郎
Lisez みみずのたはこと (みみずのたわこと) de 徳冨 健次郎 (とくとみけんじろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 265 437 caractères · 530 écrans
東京は桜の盛、車も通れぬ程の人出だった、と麹町まで下肥ひきに往った音吉の話。村には桜は少いが、それでも桃が咲く、李が咲く。野はすみれ、たんぽゝ、春竜胆、草木瓜、薊が咲き乱るゝ。「木瓜薊、旅して見たく野はなりぬ」忙しくなる前に、此花の季節を、御岳詣、三峰かけて榛名詣、汽車と草鞋で遊んで来る講中の者も少くない。子供連れて花見、潮干に出かける村のハイカラも稀にはある。浮かれて蝶が舞いはじめる。意地悪の蛇も穴を出る。空では雲雀がます/\勢よく鳴きつれる。其れに喚び出される様に、麦がつい/\と伸びて穂に出る。子供がぴいーッと吹く麦笛に、武蔵野の日は永くなる。三寸になった玉川の鮎が、密漁者の手から窃と旦那の勝手に運ばれる。仁左衛門さん宅の大欅が春の空を摩でて淡褐色に煙りそめる。雑木林の楢が逸早く、櫟はやゝ晩れて、芽を吐きそめる。貯蔵の里芋も芽を吐くので、里芋を植えねばならぬ。月の終は、若葉の盛季だ。若々とした武蔵野に復活の生気が盈ち溢れる。色々の虫が生れる。田圃に蛙が泥声をあげる。水がぬるむ。そろ/\種籾も浸さねばならぬ。桑の葉がほぐれる。彼方も此方も養蚕前の大掃除、蚕具を乾したり、ばた/\莚をはたいたり。