Classiques japonais avec furigana
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みみずのたわこと
みみずのたはこと
徳冨 健次郎
Lisez みみずのたはこと (みみずのたわこと) de 徳冨 健次郎 (とくとみけんじろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 265 437 caractères · 530 écrans
関翁の心は彼の山々の中にあるのだ。余は窓に凭って久しく其方を眺めた。中に尤も東北の方に寄って一峯特立頗異彩ある山が見える。地理を案ずるに、キトウス山ではあるまいか。斗満川の水源、志ある人と共にうち越えて其山の月を東に眺めんと関翁が歌うたキトウス山ではあるまいか。関翁の心はとく彼山を越えて居る。然しながら翁も老齢已に八十を越した。其身其心に随うて彼山を越ゆることが出来るや否や、疑問である。或は翁は摩西の如く、遙に迦南を望むことを許されて、入ることを許されずに終るかも知れぬ。然し翁の心は已にキトウス山を越えて居る。而して翁が百歳の後、其精神は後の若者の体を仮って復活し、必彼山を越え、必彼大無人境を拓くであろう。汽車はます/\国境の山を上る。尾花に残る日影は消え、蒼々と暮れ行く空に山々の影も没して了うた。余は猶窓に凭って眺める。突然白いものが目の前に閃めく。はっと思って見れば、老木の梢である。年久しく風霜と闘うて皮は大部分剥げ、葉も落ちて、老骨稜々たる大蝦夷松が唯一つ峰に突立って居るのであった。
余の胸は一ぱいになった。
君に別れ十勝の国の国境
今越ゆるとてふりかへり見し