Classiques japonais avec furigana
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しゅくず
現代日本文学館8 徳田秋声
徳田 秋声
Lisez 現代日本文学館8 徳田秋声 (しゅくず) de 徳田 秋声 (とくだしゅうせい) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 327 364 caractères · 638 écrans
彼は父には渋面を向けても、手触りの滑らかな葉子には諧謔まじりに好意ある言葉を投げかけないわけに行かなかった。
ある時庸三は彼女と一緒に、本郷座の菊五郎の芝居を見に行ったことがあった。
「君芝居嫌い?」
「大好き。連れてって。」
入ってみると、出しものは忠臣蔵で、刃傷の場が開いていたが、目の多いなかで二人きりでいるのが、庸三には眩しかった。それに彼は第三者のいることが、いつでも望ましいのであった。二人きりの差向いは、一人でいるよりも寂しかった。第三者が他人の青年か何かである場合が一番気易い感じであった。賑やかに喋っている二人――葉子をみているのが、とりわけよかった。相手が子供の場合には、仄かな不安が伴うのだったが、子供が近よらないよりも安心だった。
「子供をつれて来ればよかった。」
庸三が言うと、
「呼んで来ましょうか。」
と言って、葉子は立って行ったが、芝居がだんだん進展して行くのに、どうしたことか葉子は容易に帰ってこなかった。彼は苛ついて来た。理由がわからなかった。彼は少し中っ腹で入口へ出てみた。そして廊下をぶらついているうちに、入って来る葉子の姿が目に入った。