Classiques japonais avec furigana
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しゅくず
現代日本文学館8 徳田秋声
徳田 秋声
Lisez 現代日本文学館8 徳田秋声 (しゅくず) de 徳田 秋声 (とくだしゅうせい) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 327 364 caractères · 638 écrans
その人は亡くなって、息子さんが今の主人なんですの。」
「色の白い、温順しい……。」
「いい人よ。」
「君はまたどうして……。」
「ここ秋本さんの宿ですもの。あの人に短歌の整理をしてもらったり何かしたのも、ここですもの。」
庸三はある時は子息をつれて、しばしば重い荷物を持ち込んで来た、越後らしいごつい体格のあの商人を思い出したが、同時にあの貴公子風の情熱詩人と葉子との、ここでのロオマンスを想像してみた。それにしては現実の背景が少し貧弱で、何か物足りない感じであった。やがて圧倒的な、そして相当狡獪な彼の激情に動かされて、とにかく葉子は帰ることに決めた。
「じゃ、もうちょっとしたら行きます。きっと行くわ。」
「そう。」
葉子は顔を熱らせていた。そして庸三が出ようとすると壁際にぴったり体を押しつけて立っていながら、「唇を! 唇を!」と呼んだ。
庸三は小返りした。
葉子が車でやって来たのは、庭の隅にやや黄昏の色の這いよる時分で、見にやった庸太郎を先立ちに、彼女は手廻りのものを玄関に運ばせて、瑠美子をつれて上がって来た。
「庸太郎さんとお茶を呑んだりしていたもんですから……。