Classiques japonais avec furigana
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しゅくず
現代日本文学館8 徳田秋声
徳田 秋声
Lisez 現代日本文学館8 徳田秋声 (しゅくず) de 徳田 秋声 (とくだしゅうせい) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 327 364 caractères · 638 écrans
小夜子はいつものことで、薄暗い中の間で明々と燈明のとぼっている仏壇の下にぴったりと坐って、数珠を揉みながら一心にお経をあげていた。人生に多くの夢を抱いていることは彼女も葉子も同じだったが、長いあいだ職業的に鍛えあげられて来ているだけに、お嬢さん気質のぬけきらない葉子に比べて、心に一筋筋金が入っていた。信心は母に植えつけられた過去への贖罪でもあったが、その日その日の彼女の自制と希望でもあった。ちょうどそれは毎朝の口を漱いだり、歯を磨いたりするのと同じに、それをしないと気持が一日散漫であった。
庸三は昨夜も遅くまで花を引いて、硝子障子の白むころに疲れて寝たのであった。庸太郎も仲間に加わっていた。
「何か出ている?」
庸三はちょっと聞いただけで、新聞を覗く気にもなれなかった。好いにしろ悪いにしろ、その記事が彼と葉子のあいだに、いずれからも超えがたい一線を引いたはずであった。
「ああ、これあ少し悪いな。」
庸太郎が言うので、彼も少し気になって記事にちょっと目を通してみた。確かにそれは葉村氏の理解に信頼して、庸三の個人的に洩らした微かな憎悪の言葉が、粉飾と誇張に彩られたもので、むしろ葉村氏の心持で忖度された庸三の憎悪を、彼に代わって彼女に投げつけているようなものであった。