Classiques japonais avec furigana
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しゅくず
現代日本文学館8 徳田秋声
徳田 秋声
Lisez 現代日本文学館8 徳田秋声 (しゅくず) de 徳田 秋声 (とくだしゅうせい) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 327 364 caractères · 638 écrans
彼は牝豹の前の兎のごとく、葉子を礼讃し、屈従していた。処女のような含羞があるかと思うと、不良少年のような聡慧さをもっていたが、結局人間的には哀れむべき不具者としか思えなかった。彼は傷ついた鳩のごとく、ややもすると狭心症の発作に悩まされがちなので、常住ポケットにジキタリスの小壜を用意することを忘れなかった。ある時彼は葉子について、そのころ銀座にあったメイ・ハルミヘ行ったが、ちょうどその階下が理髪屋であったところから、葉子がウエイブをかけている間、彼も階下で髪を刈ることにした。しかし頭髪が出来あがった葉子が、いつまで待っていても上がって来ないので、降りて行ってみると、彼は椅子のうえに反りかえって、マニキュアと洒落れているのだった。
葉子の消息が絶えてからも、彼は時には彼女を訪ねるらしかったが、肝腎のことは何一つ口にしなかった。するうちに彼の姿も足も途絶えがちになってしまった。
葉子がどんな行動を取ろうと、それは手から難れた風船玉が雲へ入ったように、もうどうにもならないものであり、これで沢山だという気もしたが、何か腑ににおちないものもなくはなかった。気を落ち着けていると、風のない湖水のように、波も立たないのであったが、心が少し揺れ出すと限りなく波が立ち騒ぎ、北を指す磁石のように、足が自然に下宿へ向いて行くので