Classiques japonais avec furigana
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しゅくず
現代日本文学館8 徳田秋声
徳田 秋声
Lisez 現代日本文学館8 徳田秋声 (しゅくず) de 徳田 秋声 (とくだしゅうせい) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 327 364 caractères · 638 écrans
ある教育家の子息が薬局の主人と乗りで、十万金を投じて建てたものだったが、葉子の契約した四階の部屋は畳数も六帖ばかりで、瓦斯はあったが、水道はなかった。厳重に金網を張った大きい窓の扉を開けると、広小路のデパアトの、額にリボンをかけたような青と赤で筋取ったネオンが寂しく中空に眺められ、目の下には、早くもその裏町に巣喰ったカフエの灯影やレコオドの音が流れていたが、表通りの雑音が届かないし、上がり口のちがった背中合せの部屋に、たまに人声がするだけで、どの部屋にも客がないので、さながら城楼に籠もったように閑寂していた。
「私書きかけているものがあるのよ。出来あがったら見ていただくつもりで、一生懸命馬力をかけているの。」
葉子は大分前にも、ちょっとそれを仄めかしていたが、アパアトヘ立て籠もろうとしたのも、それを完成したいためであった。それは国民新聞の懸賞小説に応募するためで、彼女はその一作によって新しいスタアトを切り、文壇への更生を謀ろうとして心血を灑いでいたもので、その衷情を訴えられてみると、庸三も一概に見切りをつける気にはなれず、打ちめされながらもまた起きあがろうと悶いている彼女に、何か目鼻をつけてやりたくもなるのだった。