Classici giapponesi con furigana
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おおおかえちぜん
大岡越前
吉川 英治
Leggi 大岡越前 (おおおかえちぜん) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 218.436 caratteri · 437 schermate
そんなに」
若すぎる母は、身もだえした。からだじゅうの異様なうずきが、そのあとを、うッとりさせて、官能のなやましさと、こころに潜む男心への恨みとが、眸に、ひとつ火となっていた。そして眼の下の――大岡家の大屋根を、じっと見つめているのである。
「お袖さん。……たんと、待ったかい」
ひょっこり、そこへ味噌久がのぼって来た。きょうは、本屋の手代となりすましていた。蔦屋と染め抜いた書の包みを、背からおろして、お袖のそばに坐りこんだ。
「見附辺から、くさい奴が、あとを尾けてくる気がしたので、道を廻って、遅くなったのさ。やれやれ、逢い曳きのおとりもちも、楽じゃあねえて」
「あんまり待ったので、もう帰ろうかしらと、おもってたところさ」
「ウソ。嘘いってらあ、お袖さんは。――市の字と会わねえうちに、帰れといったって、帰るもんかな」
「そんなに、わたしの気もちが分ってるなら、さあ、あそこへ行って、市十郎さまを、はやく、呼び出して来ておくれなね」
「まア、そうセカセカいわなくても……」
と、久助は、煙草のけむりを、ぷウと、輪にして、彼方の大屋根を横目に見ながら、
「市の字を、連れて来るッたって、お袖さんのいうように、そう易々とゆくものじゃアねえ。