Classici giapponesi con furigana
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しんしゅうこうけつじょう
神州纐纈城
国枝 史郎
Leggi 神州纐纈城 (しんしゅうこうけつじょう) di 国枝 史郎 (くにえだしろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 188.242 caratteri · 380 schermate
甲府から裾野までは遠くはない。で、若侍は家を出ると、富士の裾野へ彷徨って行った。
さて、彼は裾野へ来ると、あちこち死場所を探し廻わった。
その時気紛れの夏の雨が、雷鳴と共に降って来た。今死ぬという間際にも、雨に濡れるということは決して嬉しいことではない。彼は雨を避けようとして、急いで四辺を見廻わした。
と、岩根の一所に、人一人ようやくはいれるくらいの、小さい岩穴が開いていた。
で、何んの考えもなく、あわただしくそこへ身を隠したが、これこそ彼の運命をして、別の方面へ転化さすべき、微妙な神の摂理であった。
まことに意外にもその岩穴は、決して見掛けほどに小さいものではなく、非常に奥が深かった。
ふと起こった好奇心からズンズン奥の方へはいって行った。
行くに従って岩穴は末広がりに次第に拡がり、左右の岩壁も天井も、もう躰へさわろうともしない。そうして実に不思議なことには、どこからか光が射して来ると見えて、仄々とした薄明が蛍火のように蒼白く、窟内一杯に充ちている。
こうして今の時間にして一時間余も歩いた時、突然荒漠たる平原を、彼は眼前に見ることが出来た。
空は高く且つ暗く、星のない闇夜を想わせる。