Classici giapponesi con furigana
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さんごくし
三国志(八)
吉川 英治
Leggi 三国志(八) (さんごくし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N1. Tocca una parola per il significato.
N1 · avanzato · kanji e kana moderni · 195.604 caratteri · 391 schermate
酸鼻、いうばかりもない。焦げる血のにおい、味方が味方を踏みあう叫喚、備えも指揮もあらばこそ、総帥曹真の生死すらわからない程だった。
身ひとつ、辛くものがれて、曹真は無我夢中、鞭も折れよと、馬の背につかまって逃げ奔っていた。
蜀勢は見落さない。あれを捕れ、あれを射よ、と猟師の如く追いまくった。しかしようやく彼は一命を拾った。それは突として、山の一方から馳け降ってきたふしぎな一軍が助けたのである。後にやっと人心地がついて曹真が見まわしてみると、自分は司馬懿仲達の軍に護られていた。
「大都督。どうなすった?」
ひとの悪い仲達は、からかい気味に、彼を見舞った。曹真は面目なげに、
「箕谷にある筈のご辺が、一体どうして予の危急を救ってくれたのじゃ。何が何やら夢のようで、さっぱり分らんが」
「よく分っている筈ではありませんか。……かならず蜀軍がこれへ来ることは」
「いや、謝った。賭はたしかに予の負けであった」
「そんなことはどうでもよろしいのです。けれど私から使いをさし上げたところ、斜谷方面には何らの異状もない、また蜀の一兵も見ないとのお言葉だったということなので、これはいかん、それが真底のお心なら一大事と、取るものも取りあえず、道なき山を横ざまに越えて、お救いに来たわけでありまする」