Classici giapponesi con furigana
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しょうせつ ほととぎす
小説 不如帰
徳冨 蘆花
Leggi 小説 不如帰 (しょうせつ ほととぎす) di 徳冨 蘆花 (とくとみろか) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 129.742 caratteri · 256 schermate
浪子はふところより一通の書を取り出しぬ。書中はただ両三行、武骨なる筆跡の、しかも千万語にまさりて浪子を思いに堪えざらしめつ。「浪子さんを思わざるの日は一日も無之候」。この一句を読むごとに、浪子は今さらに胸迫りて、恋しさの切らるるばかり身にしみて覚ゆるなりき。
いかなればかく枉れる世ぞ。身は良人を恋い恋いて病よりも思いに死なんとし、良人はかくも想いて居たもうを、いかなれば夫妻の縁は絶えけるぞ。良人の心は血よりも紅に注がれてこの書中にあるならずや。現にこの春この岩の上に、二人並びて、万世までもと誓いしならずや。海も知れり。岩も記すべし。さるをいかなれば世はほしいままに二人が間を裂きたるぞ。恋しき良人、なつかしき良人、この春この岩の上に、岩の上――。
浪子は目を開きぬ。身はひとり岩の上に坐せり。海は黙々として前にたたえ、後ろには滝の音ほのかに聞こゆるのみ。浪子は顔打ちおおいつつむせびぬ。細々とやせたる指を漏りて、涙ははらはらと岩におちたり。
胸は乱れ、頭は次第に熱して、縦横に飛びかう思いは梭のごとく過去を一目に織り出しつ。浪子は今年の春良人にたすけ引かれてこの岩に来たりし時を思い、発病の時を思い、伊香保に遊べる時を思い、結婚の夕べを思いぬ。