Classici giapponesi con furigana
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れもん
檸檬・ある心の風景 他二十編
Leggi 檸檬・ある心の風景 他二十編 (れもん) di Kajii Motojirō (梶井 基次郎) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 127.934 caratteri · 263 schermate
雨
「芳雄君。この中に牛が見えるぜ」と言いながら弟をだました。両手にかこまれて、顔で蓋をされた、敷布の上の暗黒のなかに、そう言えばたくさんの牛や馬の姿が想像されるのだった。――彼は今そんなことはほんとうに可能だという気がした。
田園、平野、市街、市場、劇場。船着場や海。そう言った広大な、人や車馬や船や生物でちりばめられた光景が、どうかしてこの暗黒のなかへ現われてくれるといい。そしてそれが今にも見えて来そうだった。耳にもその騒音が伝わって来るように思えた。
葉書へいたずら書きをした彼の気持も、その変てこなむず痒さから来ているのだった。
雨
八月も終わりになった。
信子は明日市の学校の寄宿舎へ帰るらしかった。指の傷が癒ったので、天理様へ御礼に行って来いと母に言われ、近所の人に連れられて、そのお礼も済ませて来た。その人がこの近所では最も熱心な信者だった。
「荷札は?」信子の大きな行李を縛ってやっていた兄がそう言った。
「何を立って見とるのや」兄が怒ったようにからかうと、信子は笑いながら捜しに行った。
「ないわ」信子がそんなに言って帰って来た。
「カフスの古いので作ったら……」