Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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れもん

檸檬・ある心の風景 他二十編

梶井 基次郎

Leggi 檸檬・ある心の風景 他二十編 (れもん) di Kajii Motojirō (梶井 基次郎) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 127.934 caratteri · 263 schermate

Aozora Bunko

部屋のなかには新聞の付録のようなものが襖の破れの上に貼ってあるのなどが見えた。

それは彼が休暇に田舎へ帰っていたある朝の記憶であった。彼はそのとき自分が危く涙を落としそうになったのを覚えていた。そして今も彼はその記憶を心の底に蘇らせながら、眼の下の町を眺めていた。

ことに彼にそういう気持を起こさせたのは、一棟の長屋の窓であった。ある窓のなかには古ぼけた蚊帳がかかっていた。その隣の窓では一人の男がぼんやり手摺から身体を乗り出していた。そのまた隣の、一番よく見える窓のなかには、箪笥などに並んで燈明の灯った仏壇が壁ぎわに立っているのであった。石田にはそれらの部屋を区切っている壁というものがはかなく悲しく見えた。もしそこに住んでいる人の誰かがこの崖上へ来てそれらの壁を眺めたら、どんなにか自分らの安んじている家庭という観念を脆くはかなく思うだろうと、そんなことが思われた。

一方には闇のなかにきわだって明るく照らされた一つの窓が開いていた。そのなかには一人の禿顱の老人が煙草盆を前にして客のような男と向かい合っているのが見えた。しばらくそこを見ていると、そこが階段の上り口になっているらしい部屋の隅から、日本髪に頭を結った女が飲みもののようなものを盆に載せながらあらわれて来た。