Classici giapponesi con furigana
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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
Leggi 次郎物語 (じろうものがたり) di 下村 湖人 (しもむらこじん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 159.223 caratteri · 320 schermate
である。かりに彼女とお浜とが、同時に次郎の生活に飛びこんで来て、彼に対する愛情の競争をやるとしたら、多分「姉」は「乳母」に勝をゆずらなければならないであろう。しかし、「姉」が生きた人間で、「乳母」が絵でしかない場合、次郎でなくとも、「姉」を失うことこそ、より大きな不幸と感ずるであろう。
授業は午ですんだ。その間に何度も鐘が鳴って、彼は教室を出たり這入ったりした。しかし彼が学校に居ることをはっきり意識したのは、ほとんど鐘が鳴り出す瞬間だけであった。それほど彼の心は春子のことに集中していたのである。
集中したといっても、何かを頭の中で工夫していたのではなかった。彼はただ美しい「姉」の姿を追った。それが汽車に乗って遠くに運ばれて行くのを見た。地図で想像する東京の近くまで来ると「姉」の顔も、列車も、一つの点に消えうせた。あとは、何もかもがらんとしていた。それは光でもない、闇でもない、灰色の音のない世界であった。その灰色の世界には、いつの間にか再び「姉」の顔が浮かび出した。そしてまた東京の方に消えた。彼の頭の中には、何度も何度もそれがくりかえされた。教室では先生の指図に応じて、本を開いたり、鉛筆を動かしたりはした。