후리가나로 읽는 일본 고전
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あらくれ
あらくれ
徳田 秋声
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N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 119,451자 · 236화면
五十六
月はもう五月に入りかけていた。
五十六
嫁の生家や近所への聞えを憚るところから、主婦の取計いで、お島がそれとなく、浜屋といくらか縁続きになっている山の或温泉宿へやられたのは、その月の末頃であった。
S――町の垠を流れている川を溯って、重なり合った幾箇かの山裾を辿って行くと、直にその温泉場の白壁や屋の棟が目についた。勾配の急な町には疾い小川の流れなどが音を立てて、石高な狭い道の両側に、幾十かの人家が窮屈そうに軒を並べ合っていた。
お島の行ったところは、そこに十四五軒もある温泉宿のなかでも、古い方の家であったが、崖造の新しい二階などが、蚕の揚り時などに遊びに来る、居周の人達を迎えるために、地下室の形を備えている味噌蔵の上に建出されてあったりした。庭にはもう苧環が葉を繁らせ、夏雪草が日に熔けそうな淡紅色の花をつけていた。
雪の深い冬の間、閉きってあったような、その新建の二階の板戸を開けると、直ぐ目の前にみえる山の傾斜面に拓いた畑には、麦が青々と伸びて、蔵の瓦屋根のうえに、小禽が怡しげな声をたてて啼いていた。山国の深さを思わせるような朝雲が、見あげる山の松の梢ごしに奇しく眺められた。