후리가나로 읽는 일본 고전
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あらくれ
あらくれ
徳田 秋声
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N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 119,451자 · 236화면
二
お島は爾時、ひろびろした水のほとりへ出て来たように覚えている。それは尾久の渡あたりでもあったろうか、のんどりした暗碧なその水の面にはまだ真珠色の空の光がほのかに差していて、静かに漕いでゆく淋しい舟の影が一つ二つみえた。岸には波がだぶだぶと浸って、怪獣のような暗い木の影が、そこに揺めいていた。お島の幼い心も、この静かな景色を眺めているうちに、頭のうえから爪先まで、一種の畏怖と安易とにうたれて、黙ってじっと父親の痩せた手に縋っているのであった。
二
その時お島の父親は、どういう心算で水のほとりへなぞ彼女をつれて行ったのか、今考えてみても父親の心持は素より解らない。或は渡しを向うへ渡って、そこで知合の家を尋ねてお島の体の始末をする目算であったであろうが、お島はその場合、水を見ている父親の暗い顔の底に、或可恐しい惨忍な思着が潜んでいるのではないかと、ふと幼心に感づいて、怯えた。父親の顔には悔恨と懊悩の色が現われていた。
赤児のおりから里にやられていたお島は、家へ引取られてからも、気強い母親に疎まれがちであった。始終めそめそしていたお島は、どうかすると母親から、小さい手に焼火箸を押しつけられたりした。